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【授業風景】✿ 古代文学演習 ✿

 先日、古代文学演習の授業で、受講生たちと九州国立博物館(九博)の展示を見学に行きました。

 この授業は、ひとつの作品を受講生が輪読することを中心に進めていますが、古典文学の本文や書写、写本といった、文献学・書誌学に関することも折に触れて扱っています。そして九博で関連する展示があるときには、積極的に見学に行くことにしています。
 徒歩10分以内にこのような施設があり、いつでも活用できる本学の環境は、他の大学にはない優れた特徴です。

 この日のお目当てはふたつ。まずひとつは、平安時代に書かれた仏教入門書『三宝絵詞』写本の断簡である、東大寺切です。
 1120年に、第五勅撰和歌集である金葉和歌集の撰者・源俊頼が書写したと伝わるこの写本は、平安時代の仮名散文の稀少な遺例であり、また雲母による美麗な装飾料紙を用いていることでもよく知られています。受講生たちは、料紙や本文を注意深く観察し、事前学習で配布した活字本の本文との違いについても、しっかりと読み取ろうとしていました。

 もうひとつは、藤原定家筆『明月記』の断簡です。
 定家は小倉百人一首の撰者として学生にもおなじみです。その日記『明月記』原本は多く残されていますが、かと言って、直接見られる機会はそうあるものではありません。受講生にとって、書き殴られたようにしか見えない漢文の本文を読むことは困難ですが、それでも配布した活字本(原本でなく写本をもとにしたもの)の本文と突き合わせて、違いを見つけられた受講生もいました。


 いま図書館には多くの複製資料があり、インターネットにも高精細画像が公開されています。しかし、本物を見ることでしか得られない実感もあります。この日の受講生たちも、本物を見てさまざま実感したことでしょう。これはとても大切なことです。こうした本学の恵まれた環境についても、改めて実感した1日となりました。

(日本語・日本文学科 大内英範)

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