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アジア文化学科・人間福祉学科開設10周年記念特別公演「Living Together~音楽による“ともいき”の可能性~」を開催しました。

11月29日(土)本学スクヮーヴァティーホールにて、アジア文化学科・人間福祉学科開設10周年記念特別公演「Living Together~音楽による“ともいき”の可能性~」が開催されました。
福祉の世界における“社会生活を共にする”という「共生(きょうせい)」の概念、そして、仏教思想の“すべてのいのちはつながりの中でともに生きている”という「共生(ともいき)」の概念。
このように、アジア文化学科と人間福祉学科共通のテーマとして“ともいき”の思想を掲げ、さらに“お互いを活かし合ってともにつくりあげる”ガムラン演奏を通じて、<仏教>と<福祉>と<ガムラン音楽>が相互に共振し、ともに響き合う世界であることを改めて確かめてみようという特別公演です。
公演のはじめに、本学アジア文化学科准教授の田村史子先生と人間福祉学科准教授の山崎安則先生が、それぞれの立場から、アジアの音楽がもつ力と福祉との関わり、そして共生体験活動への期待と福祉のまちづくりについてお話しくださいました。
さて、いよいよガムランの演奏が始まります。
最初の演奏者は『なかよしはうす』(=「障がいのある子もない子も地域で一緒に遊ぶ場」として保護者によって作られた施設)の子どもたちと、『Sahaja(さはじゃ)』(=障がいをもつ子どもたちとともにガムランを演奏するグループ)のみなさんです。
ステージに上がると、子どもたちは心待ちにしていたかのようにガムランを鳴らしはじめ、みんなとともに4曲を演奏しました。
そのあと、本学学生によるガムラン演奏グループ『Pratiwi(プラティウィ)』とプロのガムラン演奏家を招き入れて、フルセットの楽器による本格的な演奏も行われ、ガムランが奏でる深い響きが会場全体を包み込みました。
後半には、「音楽による”ともいき”の可能性」をテーマにシンポジウムが開催されました。
音楽療法士の生野里花先生、本学学長の小山一行先生、NPO法人「よつば」理事長の大庭貴子さんより、音楽療法・仏教・福祉のそれぞれの視点からお話しいただきました。
生野先生からは、音楽が人の心 ――とりわけ障がいをもつ人たちの心にどのように影響し、関わり合って成長していくのかを音楽療法の仕組みに触れながらお話しくださいました。
その上で、ガムラン音楽は、その特徴的な演奏スタイルによって健常者と障がい者が“ともに”交流しあい、対等に心地よくつながりあえ、障がいをもつ子たちひとりひとりが自分らしく居ることができる・・このような活動を広げていくことにはとても大きな意味があるとお話しいただきました。
 それを受けて小山先生からは、共生(ともいき)という概念は仏教の根本思想である“縁起”を近代的に表現したものだという解説に続き、“この世に存在するものは他のものとの関係の中で存在している(=縁起)”という仏教思想が、福祉と音楽それぞれの根底にある思想の基盤として深いところでその見方につながっていると、仏教の視点からの“ともいき”についてお話しいただきました。
 さらに、大庭さんより、子どもたちに『なかよしはうす』という「居場所」づくりを開いている立場として、また、障がいをもつ子どもの保護者として、彼らの生きる意味やその親としてできることをご自身の経験を辿りながらお話しいただきました。
「なんでもない私がここに来て、原稿も無しにお話しできるのは娘がそうさせているのだなと感じます」という言葉に大庭さんの熱い思いが伝わってくるようでした。
シンポジウムは、“ともいき”の可能性や関係性の理解がより深まるものとなりました。
プログラムの最後は、「ガムランの祭り~ともに楽しむ~」。
ここではガムラン経験者だけでなく、会場のみなさんも一緒にガムラン演奏を楽しみました。
アジア文化学科の音楽ゼミの学生たち、一般向け体験講座「ガムラン・ワークショップ」を受講した皆さん、本学のガムラン部(在学生・卒業生)により、順番に演奏が進められていきます。すると、客席で聴いていた『なかよしはうす』の子どもたちがぞくぞくとステージに上がりはじめました。出演者の演奏に自由な響きが加わり、それぞれの響きが重なり合い、さらに深い響きが生み出されました。
子どもたちが自分らしく、笑顔で楽しんで演奏している姿がとても印象に残っています。途中から会場の皆さんも参加して、「ともに」音楽を奏でました。
それぞれの個性を生かし合うガムランの美しい響きの中で、“ともいき”とはどういうことなのか、福祉や仏教、音楽の視点から考えることのできる、大変有意義な公演だったと思います。
(報告/現代教養学科2年 元村菜津美)
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