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第11回 仏教文化講座「仏教入門」の第五回目を開催しました

7月9日(水)太宰府市のいきいき情報センターにおいて、仏教文化講座「仏教入門」(第五回)が開催されました。
先月から連続して開催されてきた本講座もいよいよ最終回です。
「大いなる死」と題して、阿含経典『マハーパリニッバーナスッタンタ』に基づき、釈尊が入滅に至るまでの説法について解説されました。講師は、本学准教授の栗山俊之先生です。
この経典は『大般涅槃経』の経名で漢訳されており、中村元訳『ブッダ最後の旅~大パリニッバーナ経』(岩波文庫)を手にされた方もいらっしゃると思います。
釈尊は、おそらく故郷へ向かったと思われる旅の途中で体調を崩し、亡くなります。経典は釈尊と直弟子アーナンダの問答で進められてゆくのですが、数あることばの中でも、釈尊の病のきっかけとなった食事を差し出した鍛冶工チュンダへの伝言は特に印象的です。
チュンダの悲嘆をあらかじめ察知した釈尊は「決して後悔する必要はない。成道の前に供えられた乳粥の供養と、入滅前に供えられたチュンダの供養は、共に同じくらい功徳の大きい、価値あるものであった」と言い残します。
思いやり深い釈尊の人柄と、与えられた食物は等しく奇跡的で価値あるという布施への感謝の気持ちが感じられます。
また栗山先生は、釈尊が相手のうつわに応じて説法をする「対機説法・応病与薬」についても言及されました。
亡くなった幼子を生き返らせてほしいと懇願する母親、キサー・ゴータミーへの応答『ダンマパダッタカター』や、99人を殺害したアングリマーラを剣も杖も用いずに回心させた『鴦掘摩経』、愚かだと嘆くチューダパンタカに「自分のおろかさを知る者こそ智慧ある者だ」と諭す『根本説一切有部毘奈耶』などを引き、「本当の〝ちえ〟は、自分のためではなく他人を生かすためにあります。そのように相手を深く見つめる人間関係を作れているでしょうか」と私たち受講者に問いかけられました。
「それでは修行者たちよ、別れを告げよう。すべて存在するものは変化してゆくものである。汝らは怠ることなく努力せよ」と最後の言葉を残し、「無常」ということを、身をもって示された釈尊。その教えを仏伝から読み解く貴重な講座でした。
本講座は、同じ内容で10月から北九州市で開催されます。これまでなかなか出向いていけなかった地域での開催ということで、次回もたくさんの方にご参加いただけることと思います。
          (報告/大学院 人間科学研究科 坂口紀美子)
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