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公開講座「『維新起原太宰府紀念編』の和歌⑧」を開催しました【生涯学習センター】

 11月6日(土)本学1号館1202教室を会場に、公開講座「『維新起原太宰府紀念編』の和歌⑧」を開催しました。
 講師は、本学文学部 発達臨床心理学科 赤塚睦男先生です。
 この講座では、江島茂逸『維新起原太宰府紀念編』第17章の「五卿排悶の詩歌」の和歌を読み進めています。
 今回は、東久世通禧の和歌を読みましたが、この東久世通禧とは、八月十八日の政変により長州さらには太宰府に流された「七卿落ち」(後に五人となったので、“五卿”)の一人です。この三条実美を筆頭とした“五卿”は、1863年の8月から1867年の12月の約4年間をここ太宰府で過ごします。
 はじめに読んだ和歌は、詞書きに
   太宰府古川が家の金掛梅に題す 
 とあり、
 「ちることはしらぬ老木の梅の花ふたたびみたびたち栄えつつ」
と詠まれたものです。
 この和歌は、五卿たちが「金掛けの梅」という伝説が残る古川家を訪れた際、その伝説を聞き、それを歌にして古川家に送ったものと思われます。
 受講生の方々も、ここ太宰府の話というので、写真の載った資料を見ながら頷かれ、熱心にメモをとられていました。
 この「ちることはしらぬ」は、「散る事を知らない」で、めでたい事を意味しています。このようにめでたい言葉を使う事により、その言霊の力で現実にもそういう風になってほしい、と祈る事を「言(こと)ほぎ」というそうです。赤塚先生は「この歌は、古川家を言ほいでいるのです」と話されました。聞き慣れない言葉でしたが、響きのいい美しい言葉だな、と思いました。
 読み進めていくにつれ、当時の五卿たちの思いに引き付けられていくようでした。「拾遺和歌集」には贈太政大臣(菅原道真)の「あめの下逃るる人のなければや着てし濡れ衣干るよしもなき」という和歌が入集していますが、東久世通禧も「朝風にいつかはほさん筑紫潟八重の塩路にきぬる濡れ衣」という和歌を詠んでいます。
 「もしかしたら、自分たちも菅公のように一生ここにいなければならないのだろうか。私たちにかけられたのは、無実の罪である。どうか早くこの罪を晴らして欲しい」。自然とそのような辛い気持ちも伝わってきます。
 故事や縁語を強く意識した歌。春や夏といった季節を詠んだ歌。それらの巧みで美しい歌を一首一首味わっていくと、五卿たちが本当にここに生きて暮らしていた事が実感できます。
 三条実美は、その後明治政府最初の太政大臣に、東久世通禧は外国事務総督になりますが、ここで過ごした不安で心細い時期もあった。それらを忘れず、彼らがここ太宰府に残した和歌を大切にしたい、そして歌われた場所を歩いてみたいなぁ、と思いました。
 終わった後は、幕末の太宰府から、ふといつもの大学の講義室に戻ったような不思議な感覚になりました。
 この講座に長年通い続けている、という女性は「分かりやすく説明されて楽しかったです。また来ます。」と話してくださいました。
 時間を超えた五卿たちの思い、これからも一人でも多くの人に感じてもらいたいです。
                    (報告/日本語・日本文学科 2年 江藤 ゆり)
●公開講座の詳細・受講申込みはこちら
http://www.chikushi-u.ac.jp/campaign/lecture/index.html