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公開講座「第13回仏教文化講座「親鸞~その思想をめぐって」③を開催しました【生涯学習センター】

 6月16日(水)太宰府市いきいき情報センターにおいて、第13回仏教文化講座「親鸞~その思想をめぐって~“第3回 悪人~親鸞の人間観~”を開催しました。
 講師は、本学人間福祉学科准教授の中西直樹先生です。
 まず、親鸞思想を代表する悪人正機について、親鸞が救済の対象とした「悪人」とはどのようなひとびとであったかというお話から始まりました。
 親鸞の思想の根底には、すべての人間は煩悩から離れることができず、等しく「悪人」であるとし、仏の救済の立場とみなす絶対平等の宗教的人間観がありました。その絶対平等の人間観に立って、当時の社会を見るとき、そこには荘園社会の差別的構造があったのです。権力者が自らの荘園支配を正当化するために、支配秩序外にある存在を「悪人」と位置づける社会のあり方を親鸞は鋭く批判し、社会から疎外され「いし・かわら」のごとく人格を否定された人々の「尊厳の回復」を主張しました。そして、それは、大乗仏教の救済理念を正しく継承するものでありました。
 あらゆる存在は、縁起の法則により因縁によって生じ因縁によって滅します。社会の変遷に伴い、私たちの善悪の判断基準も変わります。結果だけの悪に囚われると、幅広く社会とそのなかで生きる人々のあり方や苦しみを見逃してしまうことになりかねません。親鸞の人間観によれば、人間性の根本を突き詰めると私たちは不完全な存在であり、原因と条件さえ揃えば、どんな悪行でも行いかねない悪人性を秘めているということになります。
 これは、現代社会にも裁判員制度として突き付けられた問題にもつながる。と先生は指摘されました。結果だけに囚われるのではなく犯罪に至った経緯や環境、当人の更生の可能性等も併せて判断することが大切であると考えられます。
 会場が一杯になるほど多くの方が参加され、時折メモを取り頷きながら熱心に聴く姿が多々見られました。
 講義の内容は、親鸞の人間観を通して現代社会の善悪の判断基準や救済の在り方に宗教的立場から疑問を投げかけるもので、私の今まで持っていた価値観に大きな影響と深く考える機会を与えてくれました。
                      (報告/アジア文化学科3年 古賀明日香)
次回は、6月23日(水)に開催いたします。
●公開講座の詳細・受講申込みはこちら
http://www.chikushi-u.ac.jp/campaign/lecture/index.html