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公開講座「仏教入門~ブッダの生涯を通じて仏教を学ぶ~」③を開催しました【生涯学習センター】

 10月21日(水) 久留米市生涯学習センター「えーるピア久留米」において、第15回仏教学研究室公開講義「仏教入門~ブッダの生涯を通じて仏教を学ぶ~」を開催しました。
 全5回にわたり、ブッダの生涯を通じて仏教の思想的立場について学びます。第3回目の講師は人間福祉学科の中西直樹准教授で、「覚りへの道」と題して、ブッダが禅定や苦行を繰り返す中でどのように覚りに至ったかをお話しされました。
 まず、仏教思想の特徴である多元主義的立場についてお話しされました。仏教は日本だけでも多数の宗派があり、多様な価値観と平和共存する立場をとっています。これは、正統と異端とを明確に区別し排除する他宗教とは異なる点と言えるでしょう。それでは、異端・異教徒との平和共存を可能にする仏教の立場と、ブッダの覚りのあり方はどのように関わっているのでしょうか。
 ブッダは覚りに至るまでに二度の禅定と、厳しい苦行を経験しています。禅定は精神作用の純化を目指し、苦行は肉体的欲望の制御を目指すものでしたが、どちらもブッダに覚りを与えることはできませんでした。その経験によって、ブッダは「苦」と「楽」、「精神」と「肉体」、「理性」と「本能」といった二元論的な考え方に疑問を抱くようになります。ブッダが目指したのは、そうした「二元論的見解のとらわれ」からの脱出であり、その方向性が「中道」として示されます。
 私たちはどうしようもない苦しみに出会った時、どうにかしてその苦を思いどおりにしようとしたり(苦の制御)、あるいは楽しいことだけを考え苦しみを忘れようとします(快楽の追求)。しかし、そのいずれもが本当の解決に至る道でないことは明らかです。「中道」はその苦しみを直視する事によって、正しい理解・対応を得ようとする考え方です。
 ここでは例として、誰もが逃れる事のできない「死」を挙げてお話しされました。誰しも、自分の死について考えたくはありません。しかし、それを直視する事によって多くの事に気づかされます。自分の生きる人生がかけがえのないものであること、他者も自分と同じようにかけがえのない人生を生きていること、自分のいのちが様々な縁に支えられて存在していること。このように、苦を直視することで、無常・無我・慈悲・縁起などの仏教の基本的な考え方が成立してくるのですが、そのいずれが苦を直視し「二元的見解のとらわれ」から脱却することが起点となっているのです。
 またこうした意味で、ブッダの覚りにおいては、「迷い」と「覚り」も単純二元的に分離して考えられるべきものではありません。「発心即究竟」「修証不二」という言葉に示されるように、「迷い」があるから「覚り」があるのであり、覚りに至ろうとする発心と不断の精進が、「覚り」そのものといえるのです。
 ブッダも現代の私達と同じように悩み、いくつもの試行錯誤の末に覚りに至ったという事を再認識させられる講演でした。
                       (報告/日本語・日本文学科4年 塚本杏菜)
**これからの仏教入門**
■第4回 10月28日(水)
  テーマ: 初めての説法
  講師: 永久 欣也(本学准教授)
■第5回 11月4日(水)
  テーマ: 大いなる死
  講師: 栗山 俊之(本学准教授)
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