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公開講座「文学と南(9)」②を開催しました【社会連携センター】

崎山多美の世界(その2) ——『クジャ幻視行』を読む——

講師 松下博文(文学部日本語・日本文学科 教授)

11月4日(土曜日)、前回に引き続き、「文学と南」第9回の二回目が開催されました。今回は、「『クジャ幻視行』を読む」——と題して、松下博文教授が講師を務められました。

講座は、前回同様本学の生徒3名がテキストを朗読し、松下教授が解説を進めるという形がとられました。今回読まれたテキスト『クジャ幻視行』も、前回読んだ『うんじゅが、ナサキ』のように崎山多美さんの独特の世界観の中で、戦後沖縄の風景やそこで生きた人々の記憶が繰り広げられていました。舞台は戦後沖縄のコザ市です。コザ市は、米軍人相手の商業が発達し、沖縄本島の周辺や離島の島々から多くの人が職を求めて集まり飛躍的に発展した街です。米軍人を相手にする風俗店が多く、『クジャ幻視行』はそこで働いていた女性たちを描いています。講義は実際の街の写真や地図を見たり、作中に出てくる「なりやまあやぐ(宮古民謡)」、「与那国しょんかねー(八重山民謡)」という唄を聴きながら進められ、より作品に入り込みながら読むことができました。

結末は印象的でした。作品は、お店のママが亡くなり、火葬をするため店で働いていた女性が33年前に本土に嫁いだ女性を呼び戻すところから始まります。しかし結末は、呼び寄せた女性も呼び寄せられた女性も2人ともすでに亡くなっているということが明らかになります。

話の流れや解説から、本土から帰ってきた女性は、すでに亡くなっており、ママを看取った女性が霊を呼び寄せていたということは理解できました。しかし、2人ともママより先に亡くなっていて、ママが「孤独死」をしたということは想像なかったため、悲しい結末に衝撃を受けました。
2人の間で交わされる会話には、通常会話の表現などで使われる鍵カッコが使われていないのですが、そのような文章構成をすることで「霊と会話をしている」ということを表現しているのではないかと私は考えました。

講義を終え、松下教授や受講していた方が数十年前にコザに実際行ったお話をされていました。米軍人を相手にするお店が多く、そこで生まれたハーフの子供たちが多く働いていたことを聞き、テキストにあった風景が実際に存在していたものなのだと実感しました。

報告/文学部 日本語・日本文学科3年 庄籠美奈

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