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令和3年度 卒業式・修了式 理事長祝辞

祝辞

みなさん、御卒業おめでとうございます。そして、同じくみなさんを支えて下さいましたご家族や友人、周りの多くの方々にも拍手をお送ります。

さて、これよりみなさんは、社会という荒波に船出をされます。世の中は、私の思うようにはなりません。人生の航海にも、羅針盤が必要です。羅針盤がなければ、自分が今どこにいるのかさえわかりませんし、何処に向かって居るのか不明です。

人生の航海には、人生の師が必要です。人生を教えてくれる、人生の意味を伝える、生きた先生が必要です。生きた羅針盤、先生を持つ人は幸せです。

ただし、自分の好みで選んだ先生ではありません。そんな先生は、どこに連れて行かれるやらわかりません。それを仏さまに聞くのです。

親鸞聖人と言われる方は、沢山の先生をお持ちでした。それは最初からおられた先生ではなくて、一人の先生との出会いが、次の先生との出会いを生み、また次の先生をと広がっていったのです。それを北斗七星に例えた方がありました。北斗七星を見つけると、次々にほかの星座が見つかるように広がります。

親鸞聖人の最初の先生は、法然上人でした。わずか六年の出会いでしたが、親鸞聖人は生涯の先生としてあがめられました。そして、それをご縁に次々と先生達に出会っていかれました。

およそ宗祖と呼ばれる方で、親鸞聖人ほど先生を見つけられた方はおられません。大概はお山の大将です。それは仏さまの教えを受けて、初めて広がる世界だからです。

私ごとですが、学生時代は剣道をしていました。その時の師範は田中知一という九段のお爺さんでした。練習が終わり、呼吸を整えるために正座しているときに、田中師範が「おまえ達はラクダを見たことがあるか」と聞かれました。「子どもの頃に動物園で見ました」と言うと「ラクダの目だよ、ラクダの目はまつげがデッキボウキのように分厚くて長い。砂嵐のためだな。だからラクダはいつも茫洋とした目をしている。あの茫洋とした目でないと砂漠は渡れない。目先のことにとらわれては方向を見失う」という訓示を受けました。

今でもよく覚えています。人生もしかりです。目先のことばかりに気を取られると、自分が本当に目指していたことさえわからなくなります。みなさんは、やがて子育てに追われると思います。その時にラクダの目を思い出して欲しいと思います。

それにはなんと言っても仏法を聞くことです。仏さまに教えてもらうことです。そして沢山の人生の先生に出会うことです。私たちは教えてもらわないとわかりません。それは教えを聞くということです。そして人生は使命感を持って生きていくことです。目先の生活の善し悪しや、快適とか面白さにとらわれることなく、使命を持って生きることです。

結果はどうであれ、これで生きるという道としての使命が大事です、その使命には愛と情熱と勇気が含まれています。

これより多くの生きた先生に出会い、この荒海を使命を持って、生まれた喜びと出会えたうれしさと生きがいを胸に、乗り越えて行って欲しいと願います。

皆様のこれからに、前途洋々たる海原の出航を見守り期待したいと思います。
 

令和4年3月11日
学校法人筑紫女学園 理事長 杣山 眞乘