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公開講座「文学と南(4)」③を開催しました。【生涯学習センター】

 6月17日(土)、福岡市赤煉瓦文化館(天神)において、公開講座「文学と南(4)―日本文学と琉球文学―ニホンゴとは何かー」を開催しました。
 前期公開講座の最後となる第三回目は、「古代日本文学と古代沖縄文学の発想」というタイトルで、香蘭女子短期大学教授であり、美ら島沖縄大使である石垣島出身の西表宏先生をお招きし、万葉集や古事記などの古代文学作品と八重山諸島や沖縄本島に伝わる口承芸能や音楽との比較を通して、両者の近似性や等質性についてお話しいただきました。

 先生は《日本古代文学と沖縄文学は双子のようだ》《沖縄を見ると日本がよく見える》と自説を述べられ、農耕儀礼と国家儀礼が重なる万葉集の「国見儀礼歌」と八重山諸島に伝わる「小浜節」の詞章を比較しながら、高い山や崖に登って土地褒めをする表現には、古代の日本文学と沖縄歌謡の間に発想の類似性が認められ、恋愛を絡めた沖縄文学についても、仮定形がしだいに願望の情となっていく発想の展開は、日本文学のそれと共通していると話されました。

 しかしその一方で、沖縄の表現では想いを託す対象が「月」や「雲」であるのに対し、ガスが発生しやすい本土ではそれが「霧」となり、両者の愛情表現の思考形態の違いに日本と沖縄の自然地理学的風土が関係していると述べられました。
 また、祝い・ぞめきの世界について、日本人は予祝的思考を志向する民族であり、将来そうなるよう願うことが生活の基本であり、八重山地方に伝承されている「六調節」はそうした歌謡のひとつであって、仮面を被って祭祀を行う神楽や秋田のなまはげなどの日本の仮面芸能と八重山諸島に残る「アンガマ面」などとの類似について、「仮面」の意味を、ヒトとカミの境界を仕切る習俗的な道具であると述べられました。

 最後には全員椅子から立ち上がって、それぞれリズムが異なる沖縄のカチャーシーと奄美の六調のリズムにあわせて、西表先生のしぐさを見よう見まねで各自ふりつけしながら、みんな笑顔になってお開きとなりました。

 西表先生のお話は、万葉集や「おもろさうし」など、古代日本文学と古代沖縄文学の代表的な歌謡を引用しながらの、とてもわかりやすい講座でした。会場からは、文学だけではなく文化全般についてさまざまな質問が出され、とても貴重な時間となりました。

 

報告/文学部:日本語・日本文学科4年 北田彩水(公開講座サポーター)

 

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