各学科からのお知らせNews from Departments

筑紫想い出カフェ2023 公開報告会

11月27日(月)筑紫想い出カフェ2023 公開報告会「博物館の地域活動~想い出キットによる回想法実践記」を開催しました。

筑紫女学園大学博物館学芸員課程では、博物館資料の新たな活用方法として、2015年度より、高齢者を対象とした地域回想法「筑紫想い出カフェ」に取り組んできました。2023年度は、フリースクールの子供とアクティブシニアを対象としたセッションに取り組みました。

この公開報告会では、今年の夏に実施した「筑紫想い出カフェ」の活動報告を実施した三年生が発表したあと、コメンテーターと会場からの続々と意見がでていました。

報告その1は、水城老人憩の家(9月4日)でのセッションについての話しでした。テーマは給食で、資料はアルマイトのお皿。参加者7人のうち2人が民生委員で会話を上手にリードしてくれたので、高齢者同士でやり取りが続いてスムーズにいったそうです。

資料を決める際、テレビと給食で迷ったとのこと。当時の新聞番組表を見せたら記憶がよみがえるのではないかと図書館の古い新聞で当時のテレビ欄を調べたら、プロレスと野球がほとんどだったとのことで、どちらもあまり知らない内容なので給食に決定したそうです。

質疑応答の時間に、会場から「数が限られていたテレビ番組だからこそ、深く記憶に残ってるはず。知らない内容だからといってあきらめず、むしろうまく情報を聞き出すといいのでは。」というアドバイスがでました。

報告その2は、糸島にあるフリースクール産の森学舎での2回のセッション(9月6日)についてでした。

子供対象の回想法を思いたったきっかけは、回想法がコミュニケーションの活性化に役立つなら、異なる世代間、高齢者以外でも有効ではないかという疑問だったそうです。

準備段階で、子供は回想よりも新しい知識を学ぶ学習の形になるため苦労したそうです。低学年と高学年に分けて2度のセッションを行ったそうですが、低学年は興味を引き出すのが難しく、高学年はすでに知識をもっていてそれぞれで話を展開して、どちらもあまり良い結果にならなかったとのことでした。その結果、参加者と主催者の双方に「資料に対する熱意が必要」ということが分かったそうです。

報告その3は、文化祭での活動展示報告でした。リーフレットと映像とポスターによる展示で、回想法のシミュレーションでは活発に会話が交わされたそうです。

発表の後、学園祭シミュレーション参加者からの「たまたま同級生がいたため一時間近くも話してしまったが、学生さんの感想は?」との質問に対して、実施した3年生は「若い人は道具に思い入れがないと言われたことが心に残った」と答えていました。回想法の場が、異なる世代間の交流につながっていることが分かる発言でした。

コメンテーターの奥村俊久氏(福岡市経済観光文化局)からは、「現代は、地域の高齢者に元気になって地域を支えてもらわなければ、社会が立ち行かなくなる待ったなしの状況。現在の社会課題として高齢者以外にも子供があげられる。今年度の取り組みは、そのような社会課題発見のきっかけになったのではないか」と評価されました。

もうひとりのコメンテーターの三角徳子氏(福岡市博物館)からは「子供に伝える際、どうしたら面白がられるかという教育普及の視点でとらえるといいのでは?」というアドバイスがありました。

また会場からは「テーマとして紙芝居やチンドン屋さん、昔話や歌を使ってもよいのでは」という経験を踏まえての意見、「地域課題解決を具体的にどのように導くのか?」という質問などが次々と出ました。

想い出カフェを実施した3年生、聴講した2年生だけでなく、様々な立場の参加者それぞれが、回想法の可能性について思いを巡らすことができた中身の濃い報告会でした。