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学芸員課程特別授業「筑紫想い出カフェ2023」事前授業

2023年5月16日、博物館展示論の授業にて「筑紫想い出カフェ2023」の事前学習として「回想法を用いた地域学習」をテーマにした特別授業が行われました。 講義では福岡市経済観光文化局の奥村俊久先生、福岡市博物館の三角徳子先生、そして昨年度の筑紫想い出カフェに参加していた4年生の古賀柚子さん、吉田彩音さんから回想法と地域活動の関わりについて話を伺いました。

回想法とは昔の懐かしい写真や道具、音楽などの馴染み深い道具を見たり、触れたり、音を聞いたりしながら昔の楽しい思い出や経験を思い出し、語り合うという一種の心理療法で、認知症の予防に効果があると注目されています。

博物館学芸員課程の「博物館資料論」ではこの回想法を資料の目線で考えましたが、今回の講義では展示の地域活動への影響という観点で回想法を考えました。

まず、奥村先生から回想法についてのお話をいただきました。現在、博物館には地域課題に対応することが求められているのを前提に学芸員は地域のために何ができるのかを考える必要があるということや会話や思い出を引き出す回想法が認知症患者だけでなく、地域を担っているお年寄りの人生や生活を豊かにすることに役立っているということを学びました。

次に三角先生から教育普及の立場から博物館がどのように地域と関わっているのかを博物館か具体的な取り組みを紹介していただきました。博物館では生涯学習の場として様々な人々に文化教育を受け取って貰うため、高齢者へのアプローチとして回想法が取り組まれているということや、これからの博物館は博物館から提起するのではなく、市民のニーズに応じた博物館になっていくべきだということを学びました。

最後に去年、筑紫想い出カフェに参加した4年生の古賀さん、吉田さんから去年の取り組みと課題についてのお話をいただきました。ワクワクハウスでの懐かしさを引き出す回想法の様子や学生向けの回想法を行った際の振り返りなどを報告されました。年齢層の幅を意識したシナリオ作りを行ったことや道具を使ったことがない人からどのように話を引き出すかなど参加者が会話に入りやすい環境づくりをとても意識していたことを学びました。

今回の特別講義では博物館は地域と連携を取り、地域課題に対応していくことが求められており、地域のお年寄りによりいきいきとした生活を送ってもらうために回想法でアプローチしているということを学びました。また、回想法がお年寄りや認知症予防だけに効果があるというのではなく、引きこもりになってしまっている若者や会話や居場所がない人々にも会話の機会ができるという点でも回想法が役立っているということも学ぶことができました。

私は博物館には学びを与える存在というイメージを持っていたのですが、学びを与えるだけでなく、地域課題に対応して人々の人生を豊かにするために回想法などに取り組み、地域全体の活性化にも役立っているということを学び、これからの博物館は学びを与えるだけの存在ではなく、地域と協力し社会問題に対応していきながら地域を豊かにしていく存在となっていくことが求められているのではないかと考えました。

また、筑紫想い出カフェの振り返りの中では、今後は地域のニーズを取り入れた活動もしていきたいということが挙げられていました。去年の反省を活かし、これからの活動は地域の要望を取り入れたシナリオでの回想法などを考えるなど地域との連携を図った活動を行っていきたいと思います。                                (学芸員課程3年 日本語・日本文学科 吉田優那)