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授業風景 **近・現代文学演習Ⅱ**

ある日の授業風景 ** 近・現代文学演習Ⅱ **

3年生「近・現代文学演習Ⅱ」では、短歌を扱っています。

演習発表者は、それぞれ好きな歌人や歌集について、資料を作って発表します。

今日の発表は、「倉坂鬼一郎『世界の終わり/始まり』について」でした。

発表の初めには自分の好きな歌を紹介することになっています。面白いなあと思いましたので抜粋してご紹介いたしますね。

(下の絵は発表資料の表紙より。掲載歌をイメージして発表者が描いたものだそう。)

 

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【好きな歌】

水の中に長く沈み続けていた神殿世に現れる終末の世に

【情景】

人気がない静かな森の奥の湖に世の終わりのときに現れるという古の神殿が現れた。/津波が引いたあとの無残な状況。

【好きなところ】

最初は、「森の湖で突如現れる神殿・・・ゼルダに出てきそうな風景だな」と思った。私は「ゼルダの伝説」シリーズというゲームが好きで、実際に「ゼルダの伝説」には水の中から出てくる神殿があることや「ゼルダの伝説」はハイラル王国の危機を救う勇者の物語であり、この本のテーマの「終末の世界」に共通すると思い、「ゼルダっぽい」という理由でこの歌を選んだ。

しかし『世界の終わり/始まり』のあとがきにて作者は「世界の終末の光景を好んで詠んでいたところ、東日本大震災でまさに終末を彷彿とさせる光景に遭遇し、いささか思うところがありました」と述べており、私は「東日本大震災」ということばで、私の中にもう一つの解釈が生まれ、「この歌の神殿とは津波が引いて朽ち果てた建物を比喩しているかもしれない、被災地の風景を詠んでいる歌だ」と思うようになった。この二つの風景が詠まれているところを私は気に入った。

<資料の表紙絵>

わたくしが私を殺す夢の果てに無数の我が飛び立っていく

(同歌集より)

<参考資料>倉坂鬼一郎『世界の終わり/始まり』

(書肆侃侃房 現代歌人シリーズ2017/2/14)

No.5 ​**********