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筑女について

地域から日本社会の課題を考える。-民俗芸能と地域の活性化-

文学部 日本語・日本文学科  森田真也 教授

地域から日本社会の課題を考える。
-民俗芸能と地域の活性化-

日本社会の「現在」を考える視点

種子取祭(竹富町)

日本の地域にある民俗芸能の伝統性、そしてその創造性について考えてみる。現代の日本社会の中で、祭礼や民俗芸能はどのような存在となっているのでしょうか。

私が研究の足場を置く民俗学は、「現在」という時代において日本社会を考えるために、人々が伝承してきた、生活様式、技術、知識、習慣、思考、実践を、少し前の過去を含めて捉えていく学問です。そのため各地域に直接出かけて、人々の行為や考え方に注目します。自らが行う、「あるく、みる、きく、かんがえる」というフィールドワークを重視するのです。

民俗学の面白さと難しさは、現地の人々の声に触れながら思考を巡らせることにあります。私はこれまで、主として沖縄と日本で調査を進めてきました。沖縄に通い始めて約25年がたちます。宗教的世界の奥深さとユニークさに魅了されてきましたが、それだけでなく観光と地域の関わり、戦後の社会変化と米軍基地の影響等も研究テーマとしてきました。これはともに、沖縄の人々が向き合ってきた経験を投射しながら、日本社会全体を考えることにつながっています。

伝統と地域を越える民俗芸能

平敷屋エイサー(うるま市)

2015年度から進めているのが、沖縄の伝統芸能「エイサー」を活用した地域の活性化、観光化についての研究です。本来、エイサーは旧暦の盆に行われる、先祖供養を目的とした地域の青年たちによる踊りです。その勇壮な太鼓の響と華麗な舞いは、多くの人を惹きつけてやみません。全国的にみて、多くの地域では、民俗芸能の後継者不足、規模縮小がいわれています。しかし、エイサーは急速に演舞の場を拡大化しています。また、各地の青年会だけでなく、地域を越えた新しい創作的エイサー団体、沖縄を故郷とする人々のエイサー団体が、大阪、東京、ハワイ他にも多数結成されています。さらにいうと、イベント参加、観光施設での演舞、モチーフにした土産品も増えています。特定の地域社会で維持されてきたエイサーが、新たな広がりをみせているのです。そこにはどのような経緯や背景、要因があるのでしょうか。沖縄と日本社会の関係性の変化がそこにあるかもしれません。

社会批判と実践的介入に向けて

第57回沖縄全島エイサーまつり(沖縄市)

今進めている研究では、エイサーの「グローバル化」、同時に進行する「再ローカル化」の動きに着目して、それらの展開と特質、地域の活性化と自己実現・アイデンティティとの関わり、ネットワーク形成について考察していきたいと思っています。あわせて、全国的に進む観光化と地域社会の営みについて、戦後、民俗芸能がどのように関わってきたのか、変容だけでなく、その可能性や課題を明らかにしていきたいと考えています。日本社会の大きな流れって大丈夫だろうか。地域社会の人々の在り方から学ぶこと、そこにある課題を共に考えていくことは出来ないだろうか。私の構想する民俗学は、社会批判と現場への実践的介入の方向性を同時に含んでいます。

本研究は、2015年度から日本学術振興会科学研究助成費基盤研究(C)の助成を受けて行われています。

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