私自身の中小企業での勤務経験から、「中小企業の企業ブランドはいかにして醸成されるのか」について研究を行っています。
多くの中小企業の中には、世間の注目を集めマーケットから認知され、その企業名(コーポレート・ブランド)を遠く海外市場にまでとどろかせる企業も存在します。さまざまな経営資源の制約があるにもかかわらず、なぜこのようなブランド中小企業は企業ブランドを生成して市場から「選ばれる中小企業」として認識されているのかについて、中小企業の組織内部の構造と外部の市場評価との関係から、その解明を試みています。

この研究による成果の例として、中小企業の企業ブランドの生成には、ニッチ市場でトップシェアを確保する「ニッチトップ型パワー・ブランド」と、経営理念や企業の「想い」が製品やサービスとしてビジネスの形となり「ファン」を作り、ファンが増えることで中小企業にブランドが付帯されビジネスを支えていく「1対1型のコーポレート・ブランド(=1対1の関係型企業ブランド)」の2種類のブランドモデルがあることを明らかにしました。
また、企業の組織内部の観点からは、中小企業にコーポレート・ブランドを生成するためには、経営者の人生哲学から徳性を意識した経営理念を生じさせ、顧客・社会貢献志向を自社の存在理由として明文化し、この経営理念で全従業員を共感・結束させ、行動指針となるように浸透させる必要があることを明らかにしました。

これまで学術的には議論の対象から外れ、また実務サイドからは「なんとなく有る」として曖昧なままとなっていた「1対1型のコーポレート・ブランド」の概念と生成プロセスを解明することで、困窮に喘ぐ多くの中小企業に微力ながらも貢献ができるのではないかと思い、研究をおこなっています。
多くの中小企業に企業ブランドが生成されることを願いながら、これからもこの研究を続けていきたいと思っています。