時里 奉明先生

日本語・日本文学科 教授

大学で学ぶ歴史は、人間臭さを感じ、立体感があります。

profile

九州大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学(文学修士)。(財)西日本文化協会福岡県地域史研究所で『福岡県史』近代の編纂を担当。研究テーマは、近代日本と八幡製鉄所。地域史、近代化遺産も関心がある。主な著作『北九州の近代化遺産』(2006年、共著)、「官営八幡製鉄所創立期の住宅政策」(『経営史学』2011年)など。

歴史に埋もれていた人物を大学時代の演習で発見

子どものころから歴史が好きで『歴史読本』を読み、日本の城のプラモデルを作っていました(笑)。そのうち歴史なら一生楽しんですごせると思って、大学も専門的に学べるところに。教員、歴史雑誌の編集者、博物館など、将来は漠然と歴史に関わる仕事がしたいと思っていました。大学時代、近代史の先生が日本の戦時期の体制を「ドイツやイタリアと同じファシズムと呼んでいいのか」と言われて。それまで教科書にも載ってて当然と思っていたから衝撃でしたね。表面的な知識をなぞってわかった気にならず、当時の政治や社会、文化など、史料や記録を自分で確認することが重要だと。学問は疑問を持つことが大切だと気づき、その先生に学びたいと近代史を選びました。
今の研究テーマに出会ったきっかけは、大学の演習で福岡県の衆議院議員選挙を分析したときです。

第1回目の普通選挙(昭和3年)の記録や新聞記事を調べていると、浅原健三という労働運動家が出てきました。労働者や農民を母胎とする無産政党の代表ですが、2回連続で当選したのは全国では浅原だけ。そもそも無産政党の衆議院議員が少なかった中で、浅原はかなりの支持を得たんです。でも満州事変がきっかけで3回目は落選してしまう。その後、なぜか石原莞爾という満州事変の首謀者のスタッフに。石原のせいで落選したようなものなのに、彼に心酔して転向したんですね。また、浅原は大正9年に八幡製鉄所の争議を指導して運動家の道に入ります。浅原という歴史に埋もれた面白い人物を発見し、八幡製鉄所の争議を調べるうちに、労働者や地域社会を研究の対象とするようになりました。

固定観念を捨てると違う面白さが見えてくる

八幡製鉄所の福利厚生は、住宅や病院、娯楽施設まで幅広く揃い、従業員向けの雑誌「くろがね」や文化サークルもありました。さらに、小学校や購買会も。最近ではスーパーで「くろがね羊羹」や「堅パン」を見かけますが、もともとは製鉄所の購買会で従業員向けに作ったものでした。福利厚生は日本伝統の家族主義とされていますが、地域社会や生活文化まで作り出す背景には、企業側が技術や労働力の流出を防ぐ目的もあります。

また、外国の福利厚生を選択して取り入れて来たプロセスを見ると違った観点からの検証もできます。
歴史は丸暗記で平面的な感覚になりがちですが、大学で学ぶ歴史はふくらみと奥行きがあって、立体感があります。歴史上の人物の人間臭さも感じます。なぜ歴史を学ぶかといえば、時代による文化や価値観の違いをふまえ現代が絶対ではないことを理解する、つまり現在を相対化することにあるでしょう。筑女で歴史の面白さに触れてください。

出前講義テーマ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「鉄は歴史を動かす!」

日用品から自動車まで私たちの身の回りに溢れる鉄。一方、鉄で作られる戦艦や戦闘機は人類が築いてきた文明を破壊するなど、功罪をもたらし続けます。これまでの鉄の歩みを振り返りながら、歴史の醍醐味を感じてもらえたらと思います。

一覧に戻る

switch 親と娘の未来発見マガジン[スイッチ]