福岡の女子大学|筑紫女学園大学
ドキュメンタリー映画監督の東志津さんと特別授業を実施しました
- 2025年09月23日 -
令和7年度筑紫女学園大学特別事業として、文学部の3学科が合同で、ドキュメンタリー映画監督の東志津(あずま しづ)さんと学ぶ2つのプログラムを実施しています。まず6月に、東監督の「花の夢-ある中国残留婦人」と「美しい人」を上映しました。(記事はこちらから)2つめのプログラムとして、東さんが現在映画を準備中という「ハンセン病問題」を学生が学ぶ特別授業『「ハンセン病問題」を知っていますか?-ドキュメンタリー映画監督東志津さんと共に考える』を、3日間の日程で実施しました。
【1日目】
まず初日は、東さんと本学現代社会学部の栗山俊之先生に、「ハンセン病問題」について講義していただきました。栗山先生はさまざまな社会問題に取り組んでいますが、ハンセン病問題もその一つです。
ハンセン病は「らい菌」による感染症で、皮膚や末梢神経が侵されさまざまな症状や後遺症を引き起こすことがあります。菌は弱く、現在ではほとんど発症者はいませんが、もし発症しても治療薬で治すことができます。しかし、以前は患者を強制的に隔離する政策が取られていました。「ハンセン病問題」とは、ハンセン病の治療法が確立されてからも、「らい予防法」が1996年に廃止されるまで強制隔離政策が続き、患者とその家族が壮絶な差別や人権侵害を受けたことを指します。療養所内での強制労働、監禁室への収監、結婚の条件としての断種や人工妊娠中絶など、想像を絶するような内容ですが、学生たちは真剣に聞き入り、メモを取っていました。

【2日目】
全国に14ヶ所ある療養所の一つ、熊本県合志市の国立療養所菊池恵楓園を訪問しました。まず歴史資料館を見学しました。年表、写真、録音録画の資料などたくさんの展示があり、前日に学んだことがより詳細に理解できました。また、入所者で菊池恵楓園の機関誌『菊池野』の編集長杉野桂子さんにお話を伺うことができました。数々の辛い偏見や人権侵害の経験には本当に心が痛みました。杉野さんは学生たちに、ハンセン病問題について知り、「発信者になってください」とメッセージを贈ってくださいました。その後、菊池恵楓園の園内を回り、患者の脱走を阻む高い壁、監禁室、納骨堂、慰霊碑などを見学しました。


【3日目】
この日は学習のまとめと発表です。3チームに分かれて「「ハンセン病問題」について私たちが学んだこと・考えたこと」をテーマにまとめ、発表しました。各チームは、東さんと栗山先生から学んだことや、菊池恵楓園の歴史資料館や杉野さんのお話から感じたこと、そして「ハンセン病問題」での偏見、差別、人権侵害はコロナ禍その他の現代の問題にも通じることなどを発表しました。杉野さんの「知って発信者になってください」というメッセージを学生たちがしっかりと受け止めていることを感じました。最後に東さんが一人一人に受講証を手渡して終了しました。

このように大変充実した内容の特別授業でした。ご自分の知見を学生と共有してくださった東さんと栗山先生、そして私たちを受け入れてくださった菊池恵楓園と杉野さんに厚く御礼申し上げます。大学が筑紫女学園大学特別事業に認定してバックアップしてくれたのもありがたいことでした。この3日間が、学生たちがこれから社会と関わる姿勢を少し積極的な方向に変えたのではないかと思います。
*この記事は、文学部の3学科と、参加者がいた心理コース、社会福祉コースに共通して掲載しています。