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公開講座「萩尾望都の世界―文学とアート、そして共生するジャンル―」を開催しました【生涯学習センター】

 12月19日(日)九州国立博物館ミュージアムホールにおいて「萩尾望都の世界―文学とアート、そして共生するジャンル―」を開催しました。
 講師はマンガ家の萩尾望都先生、九州大学准教授米村典子先生、本学准教授大城房美先生です。
 この講座は『トーマの心臓』『ポーの一族』をはじめとして40年に渡り「文学」と「アート」を結びつける作品を作り出してきた萩尾先生とともに、作品の魅力について考えるというものです。
 講座は3人の先生方の対談形式という形で進められました。主にピックアップされた作品は『トーマの心臓』『ポーの一族』『11人いる!』『イグアナの娘』の4作品でした。
 『トーマの心臓』はドイツの高等学校を舞台に「生」と「死」をテーマとした作品です。萩尾先生の代表作の一つですが、当時は読者アンケートで最下位であったため、打ち切りを宣告されてしまいましたが、『ポーの一族』の売り上げが良かったために、連載を続けられたという当時の秘話を披露されました。
 『ポーの一族』は吸血鬼を題材にし、過去と現在が交錯する大河ドラマです。作中に家系図や年表が描かれるなど、斬新な表現が各所に見られます。ここでは、大城先生が、『ポーの一族』とアメリカの小説家、エドガー・アラン・ポーの詩論の共通点を指摘されました。また、米村先生が「『ポーの一族』はファッションの時代考証がしっかりとなされている」と言われました。萩尾先生には「学んだことはマンガに取り入れる」というポリシーがあり、ファッションのことも調べ、この作品に臨んだとのことでした。
 『11人いる!』は少女マンガ界のタブーと言われてきたSFに挑んだ意欲作であり、人種、文化の違いといった問題にも切り込んでおり、登場する11人のキャラクター達も個性的です。SF作品において萩尾先生はアメリカの作家レイ・ブラッドベリ氏から大きな影響を受けており、レイ・ブラットベリ氏の作品の漫画化にも挑戦されています。「北米最大のコミック・コン「Comic-Con International2010」で、「Inkpot Award」というSF作品などポップカルチャーに貢献をした人に贈られる賞を受賞した際に、授賞式でレイ・ブラットベリ氏と会うことができ、非常に嬉しかったと言われました。
 『イグアナの娘』は菅野美穂主演でドラマ化された作品です。当時、萩尾先生はあまりドラマ化の話に乗り気ではありませんでしたが、プロデューサーの熱意に負け、ドラマ化の許可を出したというエピソードを語られました。
 最後に萩尾先生は、漫画家として大切にしていることは「人の言うことを聞かない、人の言うことを聞く。この両者のバランスを大切にしていきたい」と言われました。
 会場にはかつて萩尾先生の作品に夢中だった世代、若い世代など幅広い年齢層の方々がおられました。萩尾先生の作品は時代を超えて愛されているのだなと思い、楽しく、有意義な時間を過ごすことができました。
                  (報告/アジア文化学科 2年 野田 真紀子)
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