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公開講座「笑いとコトバ②」を開催しました【生涯学習センター】

 10月9日(土)太宰府市いきいき情報センターにおいて、公開講座「笑いとコトバ ②博多弁とかるた」を開催しました。
 講師は、本学文学部日本語・日本文学科 中村萬里教授です。
 はじめに、司会進行役の松下教授から「この顔はどこかで見た事がある、と思われた方はいらっしゃいませんか。先生は、現在地元のテレビ番組で月曜日のコメンテーターとして出演していらっしゃいます。中村先生は、博多方言の第一人者です。」と紹介がありました。
 中村先生は、「今日は『方言と笑い』というテーマで話していきたいと思っています。昨年私が作った博多弁かるたを見てください。」と「あ」~「ん」まで順を追って説明されていきました。例えば「き」では「きびる(結ぶ)」ですが、中村先生は地元の酒屋さんで若い女性が「おじさん! お酒2本きびって!」と言っていたのを聞いて、「残っとぉねぇ(残ってるなぁ)」と嬉しかったそうです。有名な「しろしか」「とっとーと」「もんち」等では皆さん、うんうん、と頷かれたり、御自分で発音されたりして会場は自然と和やかな雰囲気になっていきました。
 また、先生が「まがんこ、って何の事か分かりますか。」と質問すると「つらら!」という答えが即座に返ってきて、「そうですね。つららです。でも最近は言いませんね。つららを見なくなりました。温暖化で気候が変わると、このような方言もなくなってしまいます。」と話されました。方言はその地域、そしてそこでの生活と非常に密着しているものなので、昔からあったものが見えなくなったり使わなくなったりすると、それを表していた方言もなくなってしまうのだそうです。
 次に、「東京の高校生が携帯メールなどで方言を使う」という新聞記事(2010年1月1日西日本新聞)についての話になりました。本来、東京は標準語なので方言は使われませんが、地方の方言は面白い、というので使われているのだそうです。私はこれは確かにあるな、と思いました。東京の高校生が「あかん!」「なんでやねん。」と言う感覚はよく分かります。今まであまり意識していませんでしたが「方言=面白い」という感覚があるのだと思います。
 中村先生は、「こうなってくると将来の日本語は、方言は、どうなっていくのか。方言の定義は、といった問題も出てくる、方言は古くさいものではなく『地域差』であるので、しっかりと考えなくてはいけない。」と話されていました。現在、学校現場では「方言教育」というものが広がっているのだそうです。戦後は「なるべく方言や、なまりをなくそう。」という考えがありましたが、現在、方言は、その地域に残る温かみのある言葉。残していこう、という動きに変わってきているそうです。
 後半では、各地域に残る民話をその地方の方言で語るビデオを観たり、「桃太郎」がどのように語り継がれているのか、その地方の方言がよく分かるCDを聴いたりしました。
 中でも会場が最も集中したのは、西郷隆盛の義妹「岩山トク」さんの声が録音されたテープです。これは、昭和27年に当時の鹿児島市長勝目清さんが聞き役になり、トクさん97歳の折、録音されたものです。江戸時代の女性の音声が残っているのは、このテープだけだそうです。
 テープの中でトクさんが、「西郷さんは御飯を召し上がるたびに、これは美味しいですね、と奥さんに言っていたので姉さんは恥ずかしがっていました」と語られていたのが、印象的でした。
 講座が終わり、受講生の方々に感想を伺うと、「(博多弁が)懐かしかったです!」「私は福岡出身ではありませんが、とても楽しめました。」「(トクさんの声は)生きていますね。本で知る知識とはまた違う、生活の中から出てきた言葉なので、西郷さんの現実味が増しました。」と話してくださいました。
 方言は、確かに時代と共に変わっていくものかもしれません。しかし、私は、私たちが次の世代に残したいと真剣に向き合い続けていけば、例えどんなに時が流れようとも、その地域性は失わず使われていくのでは、と思いました。今自分たちが聞く、そして話す方言を大切にしていきたいな。そんな気持ちになった講義でした。
                  (報告/日本語・日本文学科 2年 江藤 ゆり)
*今後の予定は、以下のとおりです。
③10月16日(土)
テーマ:こどものことばと笑い
講師:牧野桂一(本学日本語・日本文学科教授)
④10月23日(土)
テーマ:沖縄の言葉と笑い
講師:森田真也(本学日本語・日本文学科准教授)
●公開講座の詳細・受講申込みはこちら
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