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公開講座「笑いとコトバ①」を開催しました【生涯学習センター】

 10月2日(土)太宰府市いきいき情報センターにおいて、公開講座「笑いとコトバ①日本語と笑い」を開催しました。
 講師は、本学日本語・日本文学科教授の迫野虔徳先生です。
 第1回目は日本語の中における笑いについて、お話がありました。
 迫野先生が入院されていたときに立川談志師匠の落語に夢中になり、笑うことが健康に良いということを感じられたそうです。
 また、「日本笑い学会」という学会があり、「笑いと心理的健康」、「笑顔と健康」、「笑顔と健康」などをテーマに「笑い」について要請があれば出張講演をしているそうで、「笑い」がいかに多方面に関係するか、非常に複雑な要素をもったものであるということをお話されました。
 そして、人間と動物の大きな違いは「言葉と笑い」だと説明され、対人的感情表出としての快楽の笑い、安心感の表出としての緊張からの開放、また子供向けの漫画で悪役が登場するときは「ワッハッハッハッハ」と6回笑うのは優越感の誇示ということを聞き、会場の皆さん方もなるほどという表情をしていらっしゃいました。
 日本人の笑い(Japanese Smile)については、小泉八雲の本にもあるように、なかなか理解しがたいもののようです。
 日本語という言語が「笑い」や「笑うコト」をどう表現してきたか、どうとらえてきたかということですが、古代中国語は「笑」という一語でとらえます。これに対して日本語は「笑む」と「笑う」という二つの語でとらえます。「ほほえむ」や「ほくそえむ」「えがお」「えくぼ」など前者の「えむ」は声を伴いませんが、後者の「わらう」は「笑い声」を伴います。和歌には、前者の「えむ」は使われますが、後者の「わらう」は出てきません。狂言は笑いの芸能ですが、江戸時代初めに大蔵流の狂言の台本をまとめた人として知られる大蔵虎明は、その著書の中で人を笑わせようとしておかしなことばをつかったり、滑稽なしぐさをおおげさにする人がいるが、狂言というのは、見ている人が頬にふっとえみをうかべるくらいを最上のおかしさとすべきだと言っています。江戸時代には、武士は三年に一度片頬といわれるように、武士は三年に一度片頬をふっとゆるめるくらいでむやみに笑うものではないと言っています。大声をあげて「笑う」ことより「えむ」ことを大切にする文化が日本にはあったのかもしれません。
 「笑い声」は、現代語では「はひふへほ」のハ行音で表されることが多いのですが、古代はハ行の仮名で笑い声を写すことができませんでした。古代の「はひふへほ」はファ、フィ、フ、フェ、フォという唇で発音する音で、喉の奥から出て来る笑い声とは違いすぎていたからです。中国語でhで発音される漢字「呵々大笑」を「カカたいしょう」のようにカ行の仮名で写すのはそのためです。馬も現代のように「ヒンヒン」と鳴き声を写すことができず「インイン」としていました。笑い声や馬の鳴き声がハ行の仮名で写せるようになったのは江戸時代以降で、この笑い声の写し方から逆に昔の日本語の発音がどういうものであったかを推定することができます。
 笑いの中にもとても奥深いものがあるのだということに感心しました。
               
                  (報告/人間福祉学科 3年 安山 久美)
*今後の予定は、以下のとおりです。
②10月9日(土)
テーマ:博多弁とかるた
講師:中村萬里(本学日本語・日本文学科教授)
③10月16日(土)
テーマ:こどものことばと笑い
講師:牧野桂一(本学日本語・日本文学科教授)
④10月23日(土)
テーマ:沖縄の言葉と笑い
講師:森田真也(本学日本語・日本文学科准教授)
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