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公開講座「『維新起原太宰府紀念編』の和歌⑥」を開催しました【生涯学習センター】

 11月14日(土)本学1号館1202教室を会場に、公開講座「『維新起原太宰府紀念編』の和歌⑥」を開催しました。講師は発達臨床心理学科の赤塚睦男先生です。
 幕末、太宰府に流された「五卿」の詩歌をとりあげている本講座は、今回から東久世通禧卿の歌に入りました。
 明治新政府では外交職を歴任した東久世通禧卿は、幕末、尊王攘夷派の激派として「八月十八日の政変」で周防(今の山口)から筑前太宰府に流されます。当時30歳代前半。
 「弓とれば君の御為と鉾とれば国の御為と思はざらめや」という、今回最初にとりあげた歌以下、尊皇攘夷思想の源となった国学が重視した万葉集の強い影響を受けており、当時の彼らの揺るぎない精神を強く感じさせられました。その中でも、通禧卿の詠んだこの歌には、“万葉集のふり”をするような表現・対句がみられ、彼の「国学へのこだわり」と「万葉集への憧れ」がこもっているようでした。
 また、「丈夫(ますらを)が心直(すぐ)はの剣太刀とぎにとぐべき時ぞ来にける」という歌からは、彼が太宰府に移ったその頃の、まさに動きだしている日本政治の中心で働きをすることができない自身への「焦り・憤り」を乗り越えて、いまみずからの手で社会を変革しようとする「意気込み」をはっきりと知ることができました。
 講座が終了した後も、受講者の方々から多くの質問や意見があがり、この講座の充実感を表していたと思います。また、受講者がお持ちになったご所蔵の掛け軸を紐解いてみると、今回取り上げた通禧卿直筆の一首がしたためられており、直筆を観ることができるという幸運にも恵まれました。幕末から140年以上経った現代にも、惜しげもなく存在感を放っているその掛け軸からは、当時の通禧卿の思いがより深く感じられました。
 「三代集」などと称される和歌などだけについつい目がいき、このような和歌の奥深さをないがしろにしがちな私達は、“日本の文化”を理解したつもりでも、今の私達が生きる場所で生まれた文化については、理解が乏しいということをあらためて思いしらされました。「いま生きるこの場所から生まれた文化」を知ることで、私達の学ぶ文学は本当の意味で深みをうみ、発展するのだと感じました。
                         (報告/日本語・日本文学科 2年 山本 侑加)
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