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公開講座 「アジア塾 ~アジア・酒と人の物語」が始まりました。

本学 アジア文化学科が主催する連続公開講座「アジア塾」が、10月2日(土)、福岡市男女共同参画推進センター・アミカスで始まりました。
この講座は、福岡に“アジア”の名を背負う学科があることを広く知ってもらおうと8年前からスタートし、今年は「アジア・酒と人の物語」をテーマに開催します。
第1回目は、日本美術の研究を専門としておられる本学アジア文化学科講師の緒方知美先生による「日本絵画にみる酒と人」についてです。
緒方先生はまず、日本と中国の絵画に描かれた「酒の酔い」について、「複数人数で飲み、人と人の交流が深まる酒宴」と「単独で飲み、個人の精神世界が深まる飲酒」の2パターンがあると区分し、実際にプロジェクターで古典期の絵を映写しながらその芸術観の違いを解説なさいました。
たとえば、平安時代の「餓鬼草紙」や鎌倉時代の「紫式部日記絵巻」には、貴族や公家たちが雅な室内で琵琶や鼓を奏でながら酔余に戯れる姿が否定的な視線で描かれています。
また、元旦や紅葉狩りなど四季折々に集って酒を飲んでいる「やまと絵」の文献も残っており、日本人にとって酒は、群れ集ってにぎやかに、多少羽目をはずす楽しみとして定着していたようです。
対して中国の絵画を見ると、複数での飲酒を描いた絵も多数ありますが、一人酒を表現した画風が目をひきます。
南宋時代の画家、梁楷の水墨画「李白吟行図」には、李白が一人で遠くを見つめ、泰然と歩いているさまが描かれています。そばに酒壺や杯はありませんが、快い酔い心地のまま自由に思考を深めている様子が伝わってくるようです。
このような絵画における「酒の酔い」の捉え方の違いは、日中の芸術史にも大きな影響を及ぼしたそうです。緒方先生は、日本ではこの世の春を楽しむ風俗画の流行に、中国ではお酒の酔いの深まりをそのまま表現に生かそうとする革命的な絵画潮流「逸品画風」の発達につながったと解き明かされました。
私もお酒を飲むのが大好きですが、人との交流やつながりを楽しむ日本絵画の酒と、個人の内面を見つめる中国絵画のお酒、どちらもいいなあと思います。根っからの「アジア人」なのですね。
「アジア塾」はこのあと、今月9日と16日の午後7時から、福岡市男女共同参画推進センター・アミカス(福岡市南区高宮)の2階 視聴覚室で開催します。受講料は無料です。
アジアの文化を生み出す原動力となってきた酒と人との物語を、一緒に「はしご酒」しませんか。
(報告/大学院 人間科学研究科 坂口紀美子)
公開講座の詳細・受講申込みはこちら
http://www.chikushi-u.ac.jp/campaign/lecture/index.html