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公開講座「文学と南(10)」②を開催しました【社会連携センター】

「歴史と文学ー天平時代」
②井上靖『天平の甍』を読む

講師 松下博文(文学部日本語・日本文学科 教授)

2月20日(土)の講座は、井上靖の歴史小説『天平の甍』について松下博文教授が講師を務められました。この作品は五度の渡航失敗の末に六度目に来朝を果たし、律宗を伝え授戒のための唐招提寺を開設した唐僧鑑真の来朝記です。原典は平安後期の漢学者淡海三船が著した『唐大和上東征伝』で、井上靖は漢文で書かれたこの伝記を基にして創作しました。

授戒師として戒律を伝えるため失明しながらも十二年の歳月をかけて日本に渡って来た鑑真の姿、留学生として経典と真摯に向き合い仏教修行に励む普照と栄叡、学僧としての自分の力に限界を感じひたすら写経を生き甲斐とする業行、人一倍帰朝の思いが強かったにもかかわらず唐で妻帯し、ついに帰朝しなかった玄朗、放浪僧として行方をくらました戒融、遣唐使としての彼らの栄光と挫折と希望と絶望が混沌とし、使命を果たし帰ってきた僧たちが齎した文化が当時の人々にとっていったい何であったのか、また、現代のわたしたちにとって「天平文化」と名づけられた文化とはいったい何であるのか、歴史の闇に消えて行った多くの留学僧たちの姿に思いをはせながら、その意味について考えさせられる内容でした。

配布された資料には、第8次遣唐使として阿倍仲麻呂とともに渡唐し、吉備真備とともに第9次遣唐使の帰り船に乗って帰朝した玄昉のお墓の写真が載っていて、お墓が太宰府戒壇院の傍らにあることにも驚きました。

(報告/文学部 日本語・日本文学科3年 白石彩花)

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