お知らせNews

公開講座「文学と南(9)」①を開催しました【社会連携センター】

崎山多美の世界(その1) ——『うんじゅが、ナサキ』を読む——

講師 松下博文(文学部日本語・日本文学科 教授)

10月17日(土曜日)、筑紫女学園大学礼拝堂で公開講座「文学と南」第9回が開催されました。第1回目は、沖縄出身の作家崎山多美さんの『うんじゅが、ナサキ』をテキストに、「戦争」や「記憶」に対する彼女の捉え方を、松下博文教授が解説して行く形で進められました。

講座は、テキストを本学の1年生3名が朗読し、松下教授が解説する形で進められました。
私は崎山さんの著書を読むのは今回が初めてだったのですが、今までに読んだことのない世界観に圧倒されました。正直、最初は霊的なものや憑依のような独特の世界観が難しく、理解しづらい部分もありました。しかしお話を聴きながら、戦争の記憶が県民の意識の中に大きく存在し、作家としてそれをどう捉え、作品としてどのように昇華していくかが崎山さんの中に大きく存在していたのだと感じることができました。

記憶として公的な書物などに記された戦争の歴史は、「戦争」のほんの一部で、死者たちの声や道端で聞く個人個人が持つ記憶の多くが闇に葬られています。私は、『うんじゅが、ナサキ』の世界を、闇に葬られたこのような死者の記憶の掘り起こしを通して、「記憶を思い出すことが死者への愛(ナサキ)」であるというメッセージとして受け取りました。

講義後には感想や質問が寄せられ、沖縄の年中行事のシャーマニズムについての質問もありました。私はいま大学の講義で、沖縄文化やシャーマニズムを学んでいます。それを今回の公開講義を通して実際に存在するものだと体感しながら、作者の伝えたいことを読み解く作業は新鮮に感じました。テキストを読み解く中で学んだ「死者を忘れないことが死者への愛だ」という言葉が深く印象に残る講座でした。

報告/文学部 日本語・日本文学科3年 庄籠美奈

●公開講座の詳細・受講申込みはこちら↓↓↓↓
https://www.chikushi-u.ac.jp/lifelong/lecture/