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公開講座「文学と南(3)」④を開催しました【生涯学習センター】

 10月22日(土)、福岡市赤煉瓦文化館(天神)において、公開講座「文学と南(3)―火野葦平・上野英信・佐木隆三・谷川雁」を開催しました。第4回目の講師は、谷川雁研究会代表の松本輝夫氏、コーディネーターは、文学部日本語・日本文学科の松下博文教授でした。

 谷川雁には、「東京へゆくな/ふるさとを創れ」「世界の映像を裏返さないかぎり永久に現実を裏返すことはできない。イメージからさきに変れ!これが原点の力学である」「感性のコンミューン権力を現実より一足さきにうちたてよう」「沖縄は精神の次元でどの国家にも帰属していない」「沖縄はなにもかの南ではない。あきらかになにものかの北端である」「沖縄をもう一つのイーハトーヴに」等々、数多くの名言があります。
 また、沖縄に触れて書いた文章には、「からまつ林からの挨拶」(「沖縄タイムス」1983年11月21日~23日連載で発表)、「心の南に海を持とう―沖縄をもう一つのイーハトーヴに」(「十代」1984年3月号)等があります。
 これらの文章の中で、雁が、沖縄をヤマトにからめとられた日本中心の「北の南」の視点から見るのではなく、かつての琉球王国の貿易圏であった東南アジアの北に位置づける「南の北」から見る視線を提起したこと、あるいは東アジアも視野に入れた「環東シナ海文化圏創造」への可能性を示したことを知り、その先見性に谷川雁の思想の斬新さを感じることができました。

 彼は「沖縄に行く資格がない」と40年近くも迷い続けたそうです。それは一体何故なのでしょうか。沖縄住民の数多の不条理な死と引き換えに生きながらえたという本土人としての原罪意識、本来沖縄は日本の一部ではない、といった雁の沖縄に対するとらえ方や考え方であることが松本氏から語られました。
 そのうえで、雁は1983年11月に初めて沖縄に訪問し、講演を開催しました。きっかけは、賢治童話の活動を「もう一つのイーハトーヴ」と定義づけ、沖縄にも広げることを意図していたからでした。
 こうした話を聞いて、谷川雁の沖縄に対する熱意が理解されました。参加者の方も、とても熱心に松本氏のお話を聞かれていました。質問を受け付ける際にも、「楽しいお話が聞けた」といった感想や、自分の意見を熱っぽく述べられた方もいらっしゃいました。

 4週連続の講座にも関わらず、毎回、会場がいっぱいになるほどたくさんの方々にご参加いただきました。こころより感謝申し上げます。ありがとうございました。

 報告/人間科学部:人間科学科発達臨床心理コース2年 野田愛美(公開講座サポーター)

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