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公開講座「文学と南(3)」③を開催しました【生涯学習センター】

 10月15日(土)、福岡市赤煉瓦文化館(天神)において、公開講座「文学と南(3)―火野葦平・上野英信・佐木隆三・谷川雁」を開催しました。講師は文学部日本語・日本文学科の松下博文教授でした。

 第3回目は「佐木隆三と沖縄」というタイトルで、沖縄の日本復帰直後に書かれた『偉大なる祖国アメリカ』をテキストに、1970年代の沖縄の政治状況の中での佐木文学の特異性ついてお話されました。
 作品の主人公与那城修(通称サム)は、母が沖縄出身で父がアングロ・サクソン系の白人であり、サムは父の血を受け継いだことに大きな誇りをもっていました。しかし彼は20歳のとき父の祖国アメリカに脱出する直前、小学6年生の女子児童を殺害してしまいました。その理由は混血の私生児として生まれた自分に対して冷淡だった島の人への復讐であったと供述します。
 作品はサムが未決檻として処遇されるところで終わりますが、復帰前夜の沖縄を舞台に、一人のアメラジアンの心的風景を通して、はたして沖縄にとって「祖国」とよぶ日本への復帰は正しい選択であったのか、アメリカに強烈なシンパシーをよせるサムの姿は、その真意を問い詰めているかのようでした。
 会場からは未決監のサムはその後どのようになったのか、結局アメリカへ渡ることができたのか、アメリカに渡ったとしてもアメリカの現実に突き放されて沖縄に舞い戻ってくるのではないか、また、そもそも人間を法律で裁くことができるのか等、さまざまな問題が提出されました。今に持ち越されている沖縄の現実を人権問題も含めて深く考える講座となりました。

報告/文学部:日本語・日本文学科1年 桑野恵理子(公開講座サポーター)

 

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