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✿ 卒業生の皆様へ ✿ No.2 学科長祝辞

日本語・日本文学科 卒業生の皆様
ご卒業 おめでとうございます


 3月11日、日本語・日本文学科の学位授与式は、スクヮーヴァティーホールで挙行されました。
 保護者の方々をお招きすることはできませんでしたが、Zoomでのリアルタイム配信の他、後日編集動画もアップされるそうです。皆さんも是非、大学ホームページからご覧ください。
 今年は、恐らく本学史上初の学科別卒業式となりました。例年の来賓祝辞等はなく、学長式辞のほかは学科長からの祝辞、学位記の授与という形で進みました。コンパクトではありましたが、卒業生代表のすばらしい謝辞とともに、皆さんの心に残る式になったことでしょう。

 それでは、学科長のお祝いの言葉を紹介します。
 

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 皆さん、ご卒業、おめでとうございます。日本語・日本文学科の教員を代表して、お祝いのご挨拶を述べさせていただきます。

 二〇二〇年度、皆さんの大学生活の四年生最後の年は、新型コロナ禍の一年であったと思います。これまでにない経験の連続で、戸惑うことも多かったのではないでしょうか。私たち教員一同も、最後の締めくくりの年を、皆さんと共に過ごすことが大きく制限されたことを、残念に思っております。
 それでも、今日の晴れの日をこうして迎えられたことを嬉しく、そして頑張って卒業まで来れた皆さんを誇らしく思います。

 さて、私の専門は、民俗学と文化人類学なのですが、初期の人類学者にマリノフスキーという人がいます。彼は、今から百年程前、『西太平洋の遠洋航海者』というトロブリアンド諸島の民族誌をまとめています。これは、人類学史上、初めての現地の長期滞在の調査による体系的エスノグラフィーといわれています。
 マリノフスキーは異なる文化をフィールドワークする上での条件として、四つの点をあげています。それは、長期間の現地滞在、現地言語の習得、現地の人々と信頼関係を築くこと、現地の人々に認めてもらうことです。以降、人類学者にとってこの四つが、異文化を調査する上での基本的な指針となりました。

 彼の体験は、自らの居住地から遠く離れた異文化でのものでしたが、長期滞在中に見出した、他者を理解するための条件のうち、後者二つは、私たちの身近なまわりでも共通することだと思うのです。つまり、相手と信頼関係を作るように努力すること、相手に自分の存在を認めてもらうようにすることです。
 昨今、ネットの急速な発達で、これまでなかったようなコミュニケーションの在り方が生まれています。様々なソーシャルネットワーク上で、気軽に友人・知人、それ以外の人と繋がり、そのコメントや写真に「いいね」を付けること、付けられることが出来るようになっています。

 新型コロナ禍で外出が制限されるなか、大学の授業も含め、様々な領域で改めてネットの便利さが認識されました。しかし、ネットが有用である反面、新型コロナ禍がもたらしたのは、意外にも人と人が対面で直接繋がることの重要性だったのではないかとも思うのです。
 家族以外の人と会って話をすること、対外的な付き合いは、ともすると煩わしさや気恥ずかしさを含むのも事実かもしれません。また、ネット上では気軽に出来ても、実生活で、相手に「いいね」をしてあげること、してもらうことは、実はかなり難しいことのように思えます。
 マリノフスキーはこの本の最後に、人間を考える上で重要なのは、その多様さと独自さに愛情を感じることだとも述べています。厄介な新型コロナ禍において、私たちはこうして今日のように対面で会う事、実際に会って話をすることの大切さに気づくことが出来ました。それは、身近な他者との交流、そして小さな愛情の交換でもあるのではないでしょうか。

 皆さんは、今日、「日文」を卒業生として離れることになります。社会人としての新たな歩みは、これまで以上に、発見に満ちた、充実したものであるかもしれませんし、時に厳しく、大変なものであるかもしれません。

 そうであったとしても、学びの日々を自信とし、いくつもの出逢い、交流・交換の四年間を大切に胸に留めてください。そして、新たな他者との交流・交換を目指してほしいと思います。

 最後に皆さんの大事な時間に関われたことを、教員を代表して「ありがとうと」、そして改めて「卒業おめでとう」と言わせていただきます。


No.112 **********