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❀ ようこそ 日本語・日本文学科へ ❀

 ❀ ようこそ 日本語・日本文学科へ ❀ 

2021年4月、日本語・日本文学科には、70名の入学者をお迎えしました。

 春についての文章を、今年も紹介しましょう。

故郷の春と題してしばしば描かれるわれわれの胸の絵は、(中略)日のよく当たる赤土の岡、小松まじりのつつじの色、雲雀が子を育てる麦畠の陽炎、里には石垣のたんぽぽやすみれ、神の森の木の大がかりな藤の紫、今日からあすへの境目も際立たずに、いつの間にか花の色が淡くなり、樹蔭が多くなっていく姿であった(後略)。*

 イメージ出来ますか。これは西日本の春の風景についての描写です。

 大正時代に書かれた日本民俗学の創始者・柳田國男の「雪国の春」は、日本人の季節感と風土が文学や学問に与えた影響、東北の民俗と季節との関わり、東北と沖縄に共通するような宗教的観念についてが、自身の旅の経験と合わせて綴られたものです。

 さらに、柳田は感慨も含めて東北の若春の訪れの喜びを、以下のように表現しています。

所々の田舎では、碧く輝いた大空の下に、風はやわらかく水の流れは音高く、家にはじっとしておられぬような日が少し続くと、ありとあらゆる庭の木が一せいに花を開き、その花盛りが一どきに押し寄せてくる。春の労作はこの快い天地の中で始まるので、袖を垂れて遊ぶような日とては一日もなく、惜しいと感歎している暇もないうちに、艶麗な野山の姿はしだいしだいに成長して、白くどんよりとした薄霞の中に、桑は伸び麦は熟していき、やがて閑古鳥がしきりに啼いて、水田苗代の支度を急がせる。**

* **柳田國男「雪国の春」『定本柳田國男集』第2巻 筑摩書房:1962)

 柳田が想起したような季節感を、大地から遠ざかった今の私たちはあまり意識せずに過ごしているかもしれません。特にコロナ禍において、気軽に出かけることが少ない昨今ですね。

 心が少し浮き立つような春の一日。

 入学生の皆さんも季節の移ろいや日々の暮らしの出来事の機微を感じる気持ちを大切にしてくださればと思います。

4月2日 入学式の日に

No.117 **********