各学科からのお知らせNews from Departments

❀ ようこそ 日本語・日本文学科へ ❀

 ❀ ようこそ 日本語・日本文学科へ ❀ 

日本語・日本文学科には、95名の入学者をお迎えしました。

今年度は、新型コロナウイルスの影響で、残念ながら入学式を行うことができませんでした。

せっかくの門出なのに、、、。

社会全体に少し暗い影が差し込んでいますので、昨年に続き春の詩をご紹介しますね。今回は近代です。

 

うたふやうにゆつくりと‥‥‥

日なたには いつものやうに しづかな影が
こまかい模様を編んでゐた 淡く しかしはつきりと
花びらと 枝と 梢と――何もかも……
すべては そして かなしげに うつら うつらしてゐた

私は待ちうけてゐた 一心に 私は
見つめてゐた 山の向うの また
山の向うの空をみたしてゐるきらきらする青を
ながされて行く浮雲を 煙を……

古い小川はまたうたつてゐた 小鳥も
たのしくさへづつてゐた きく人もゐないのに
風と風とはささやきかはしてゐた かすかな言葉を

ああ 不思議な四月よ! 私は 心もはりさけるほど
待ちうけてゐた 私の日々を優しくするひとを
私は 見つめてゐた――風と 影とを……

 

(『立原道造全集』第1巻 詩集Ⅰ 角川書店:1971:80-81)

 

昭和初期に活躍して、24歳で胸を患い夭逝した立原道造(1914~1939年)の詩です。この詩は、立原の没後編さんされた詩集『優しき歌Ⅰ』に収められたものです。

立原の詩は、淡い色彩と深いやさしさに満ちたものです。わかりやすい文体、清廉、透明でやわらなか言葉の連なりから抒情派詩人と称されることもありますが、甘い調べだけでなく、その短い生涯とも重なり、時にある種の悲哀を帯びているともいえます。

 

4月2日 入学式の(予定の)日に

No.88 **********