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田村史子先生の最終講義が行われました。

1月9日(木)2限目の「専門ゼミナールⅡ」の授業で、田村史子先生の最終講義が行われました。

題目は「〈音楽文化研究の一例〉東南アジアにおけるGong『ゴング』の製造・流通に関する体系的研究―その音と形―」で、現在、先生が科研費助成を得て研究されているホットなテーマについて、ご自身の研究歴も織り交ぜながらお話しされました。

講義は、実物のゴングの演奏、現地で撮影したビデオ映像などを使って、ビビッドに五感に訴える手法で行われ、田村先生が日ごろから大切にされている感性を鍛えられるよい機会となりました。

 

そもそも田村先生がアジア音楽の研究に携わるようになったきっかけは、幼いころから習っていたピアノ演奏に対し、中学生になって疑問を覚えたことにあるそうです。どうしてもシューマンが満足に弾けなかったときに先生から「西洋の思想がわからないと弾けるはずないよ」と教えられ、日本人としてアジアの音楽を学ぶという道があることに気づき、のちに東京芸術大学の音楽学理科に進まれたということでした。田村先生の研究の基本が、音楽の根源の探求にあるということを、あらためて知らされました。

講義内容は、東南アジアに広がる『ゴング』の製造法と流通について、先生の研究でこれまで明らかになったことのまとめでした。まず、ゴングの種類は「こぶ」の有無で大きく二つに分かれ、「こぶ」で音高が定まることを、音を出しながら示されました。次に、ゴングの製造法には熱間鍛造、冷間鍛造、鋳造の3種類があり、そのうち最も高度な技術の熱間鍛造のセンターがミャンマーのマンダレーとインドネシアのスラカルタにあることが実地調査から明らかになったことを説明されました。二か所のゴング製造センターの成立の背景について今後の研究の行方に興味がわきました。最後に音楽学研究における現地調査の重要性にふれてお話を結ばれました。

今年で20周年を迎えるアジア文化学科の開設メンバーとして、はじめて九州に赴任された田村先生ですが、今回の講義には、田村先生と同じく学科開設メンバーであった中川正法学長や秦惟人元教授も参加されました。中川学長からの挨拶では若かった時の懐かしいお話にも花が咲きました。

田村史子先生の筑紫女学園大学アジア文化学科での20年間の教育研究の学恩に、心から謝意を表したいと思います。アジアの音楽に触れるという得難い経験を我々に与え、アジアの多様な文化のすばらしさを教えてくださいました。本当にありがとうございました。

今後もさらなるご活躍をお祈りいたします。(アジア文化学科教員 小林知美)