研究紹介Research

榊 祐子 准教授

言葉や文化の違いを通して、人間の心を理解する

言葉を通して、人間の理解のプロセスを解明する

私たちは、どのように第2言語を習得し、理解しているのでしょうか。海外との接触が容易になり、日本でも英語のみならず、様々な言語を学習する人が増えてきました。“単語はなんとなく聞き取れるが、その意味は分からない”、“中国語で書かれた漢字の意味はなんとなく理解できる”といった経験をしたことがある方も多いでしょう。「第2言語を学ぶとき、日本人にとって、英語を学習する場合と韓国語や中国語を学習する場合は、同じ習得のプロセスを経るのだろうか?」この疑問が大学の卒業論文以降、私が継続して研究してきたテーマです。第2言語を習得するプロセスについて、心理学の中でも、認知心理学を基盤として、言葉に注目した実証的検証を行なってきました。言語が持つ文法や起源の特性から、日本語、英語、韓国語、中国語を刺激とした実験を日本、韓国、台湾で調査を実施し、翻訳に要する時間や単語の再生課題から得られたデータを分析するという方法で検証を重ねました。2度にわたり韓国で行った実験は、1998年度および2000年度アジア太平洋センター若手研究者研究活動助成を受けました。日本語話者における英語と韓国語の習得のプロセスに関する研究成果は、2014年3月に博士論文として提出しました。

多様な文化の理解を通して、多文化共生社会の構築を目指す

認知心理学の領域で実験という手法を用いて、研究を進めるのと同時に、臨床心理学の実践活動として日本人学生だけでなく、留学生を対象とした学生相談に関わっています。大学院生時代には、学生サポーターとして留学生の国際寮に住み、生活支援を行ってきました。

大学生は、発達的視点からみると、どんな人間になりたいか、将来どんな仕事に就きたいのか、アイデンティティの確立のために模索を続ける時期といえます。友人関係、学校生活、将来のこと、家族関係などが絡み合い、不安定な状態になることもあります。さらに留学生の場合は、言語の違い、生活習慣の違いなどから、ストレスが高くなることも少なくありません。様々な文化的背景を持つ留学生に対する心理支援の場合、現実問題の解決や環境調整を行なうことで、心理的ストレスの緩和につながることもあります。今後は、日本の大学でも留学生の増加が見込まれます。大学だけでなく、社会全体が多様な文化を認める社会の構築を目指したいと思います。

関連ページ