研究紹介Research

裵 海善 教授

日本経済と韓国経済の比較研究の道のり

日本経済と韓国経済からアジア経済を、そして世界経済を理解する。

私は韓国で生まれ、政治・経済的に韓国の激動期であった時代を自ら経験しながら過ごしました。日本に留学し大学院博士課程に進学した頃はちょうど日本のバブル経済が崩壊した時点で、日本経済の構造をその時初めて勉強しました。博士学位取得後、韓国へ帰国してから、大学学部や大学院で韓国学生を対象に日本経済を教えました。その後、筑紫女学園大学に勤めてからは、学生に韓国経済を教える立場になりました。

韓国と日本で教育を受け、また、両国の経済を教えながら、私は常に両国の経済の仕組み、それぞれの経済成果と政策における特徴や課題を比較しながら考えるようになりました。そして、アジア経済の成長段階と経済構造、また世界経済の流れを学生に説明する際、日本経済と韓国経済の知識は大きな力になっています。(『韓国経済がわかる20講』のはしがきから抜粋・加筆)。

韓国の少子化と女性雇用〜日本との比較観点から〜

私は長い期間、女性労働問題や非正規雇用問題の日韓比較研究にたずさわってきました。少子化問題に注目し研究を始めるようになった契機は、韓国の合計特殊出生率が2005年に1.08で史上最低水準を記録したことでした。少子化問題は社会的・文化的背景、諸制度、女性労働とも関わる複雑な問題であり、有効的な少子化対策のためには、政府予算のみならず、法律の整備や労働市場の改革をも伴う総合的な対策が必要であることに気づき、少子化問題と女性労働問題を並行した研究を続けてきました。

少子高齢化と共に、生産年齢人口が減少するとの危機感から、女性が働きやすい制度の整備、女性の地位向上や雇用増加のための政策が重要となっています。これら数年にわたる少子化と女性雇用の研究成果を、筑紫女学園大学の学術出版助成金を受け、『韓国の少子化と女性雇用―高齢化・男女格差社会に対応する人口・労働政策』(裵 海善著、明石書店)として、2015年の12月、出版しました。

女性非正規雇用決定メカニズムの日韓比較

現在進めている研究は、日本と韓国の女性非正規職の雇用構造で見られる特徴や雇用決定メカニズムを、供給側、需要側、政策と制度側から分析し、女性非正規職雇用増加が今後の経済成長や社会に及ぼす影響を日本と韓国で比較することです。

非正規職雇用の増加は世界的な傾向であり、日本と韓国は女性雇用者の5割が非正規職として働いています。経済のグロ-バル化や少子高齢化の進展と共に女性労働、特に女性非正規職労働の重要度が高まっていることから、本研究の成果が、日韓の今後の女性雇用の政策樹立の際、貴重な資料を提供することを期待しています。

本研究は、2013年度から日本学術振興会科学研究費助成金基盤研究(C)の助成を受けて行われています。

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